LEVEL 10 データを「魅せる」グラフ 上級
Lesson 083

条件付き書式について③

練習用Excelファイル lesson083-practice.xlsx

練習用ファイルは、パソコンからダウンロードしてください。

条件付き書式③

条件付き書式の第3弾は、集大成 にあたる回です。

これまでは「1つのセルの値で、そのセル自身に書式を付ける」という使い方でした。

今回は1歩進んで、「1つのセルの値で、行全体に色を塗る」という、レポート資料でよく見るあのテクニックを扱います。

実現には 数式 を使った条件付き書式と、複合参照(レッスン037)の知識が必要です。

「複合参照って、どこで使うの?」 と感じていた方、ようやく出番 です。複合参照の真の力を、ここで体感してください。

1行まるごと色塗りのイメージ
1行まるごと色塗りのイメージ


数式を使った条件付き書式

条件付き書式のメニューに、ちょっと地味だけれど超強力なメニューがあります。

「新しいルール」→「数式を使用して、書式設定するセルを決定」

これを選ぶと、自分で数式を書いて、その結果が TRUE になったセルに書式を付ける ことができます。

今までは「以上」「以下」「含む」など、Excelが用意した条件しか選べませんでした。数式が使えるようになる ことで、条件付き書式は 無限の表現力 を手に入れます。

新しいルールメニュー
新しいルールメニュー


試しに:金額が500以上の「行全体」に色を塗る

:::excel
A1=日付
B1=店舗
C1=商品
D1=金額
A2=2026/5/1
B2=東京店
C2=コーヒー
D2=400
A3=2026/5/1
B3=大阪店
C3=ケーキ
D3=500
A4=2026/5/2
B4=東京店
C4=紅茶
D4=350
A5=2026/5/2
B5=名古屋店
C5=ケーキ
D5=600
A6=2026/5/3
B6=大阪店
C6=コーヒー
D6=400
:::

D列(金額)が500以上の行を、行ごと色塗りしたい」というケース。

行ごと色塗りは、レッスン081で扱った「指定の値より大きい」では実現できません。あれは「条件に合ったセルだけ」が色付きになり、隣のセルは塗られないからです。

ここからが、数式と複合参照の組み合わせ の出番です。


手順

手順:

  1. A2:D6 を選択(色を塗りたい範囲全体 を選ぶ)
  2. ホームタブ →「条件付き書式」→「新しいルール
  3. 数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選択
  4. 数式欄に:

=$D2>=500

  1. 書式」ボタン → 塗りつぶしで色を選択
  2. OK

これだけで、D列が500以上の行(D3、D5の行)が 行まるごと色付き になります。

数式
数式

数式を入力中、左右の矢印ボタンを押すと、アクティブセルの位置が絶対参照で入り込んでしまいます。これを回避するには、[F2] を押してから上記の数式を作成すると、ミスが少なくなります。

行全体が色塗りされた結果
行全体が色塗りされた結果


なぜ $D2 と書くのか

ここが、今回いちばん理解してほしいポイント です。

数式に書いた $D2 ── これは 複合参照(レッスン037で扱った絶対参照と相対参照の合わせ技)です。

  • $D (列に$):D列に 固定
  • 2 (行に$なし):行は 可変

なぜこう書くのか。条件付き書式は、選択範囲の各セルに、相対的に式を適用 します。

選択範囲 A2:D6 の 各セル で、数式がどう解釈されるかを考えてみます。

  • A2 で評価 → $D2 >= 500 → D2の値(400)を見る → FALSE → 色なし
  • B2 で評価 → $D2 >= 500 → D2の値(400)を見る → FALSE → 色なし
  • C2 で評価 → $D2 >= 500 → D2の値(400)を見る → FALSE → 色なし
  • D2 で評価 → $D2 >= 500 → D2の値(400)を見る → FALSE → 色なし
  • A3 で評価 → $D3 >= 500 → D3の値(500)を見る → TRUE → 色塗り
  • B3 で評価 → $D3 >= 500 → D3の値(500)を見る → TRUE → 色塗り
  • C3 で評価 → $D3 >= 500 → D3の値(500)を見る → TRUE → 色塗り
  • D3 で評価 → $D3 >= 500 → D3の値(500)を見る → TRUE → 色塗り

つまり、列方向には D列を固定して参照(だから$D)、行方向には対象セルと同じ行を参照(だから 2 のまま)。

「同じ行の中で、D列だけ見て判定する」── これが $D2 の意味です。

複合参照の動き
複合参照の動き


ここを間違えると、結果が変わる

書き方動き結果
$D2D列固定、行は相対行ごと色塗り(意図通り)
$D$2D2のセル固定D2が500以上なら全セル色塗り
D2完全相対各列で別々の判定 をしてしまう
D$2行2固定常に2行目の値で判定

$ を1つズラすだけで、条件付き書式の挙動が大きく変わります

実務でいちばん多いミスは、「$」をつけ忘れて D2 と書いてしまう ケースです。すると条件付き書式は、A列のセルでは「D2を見る」のではなく「A2を見る」と動いてしまい、思った結果が出ません。

「列を固定したい$」「行を固定したい$」「両方固定したい$」── どれが必要か、紙にメモして組み立てる くらいの慎重さで臨んでください。


応用①:特定の文字を含む行を塗る

店舗が東京店の行を、行ごと色塗りしたい」ケース。

数式:

=$B2="東京店"

  • $B(列固定)で、B列のみを見る
  • 2(行可変)で、判定対象の行ごとに評価
  • B列が "東京店" の行が、行ごと色塗りされる

東京店の行を強調
東京店の行を強調


応用②:日付で塗り分け

今日の日付の行を、行ごと色塗りしたい」ケース。

数式:

=$A2=TODAY()

A列の日付がTODAY()の戻り値と一致する行が色塗りされます。今日の予定がパッと分かるスケジュール表 などに活用できます。

1週間以内の予定を強調したい」なら、

=AND($A2>=TODAY(), $A2<=TODAY()+7)

期限を過ぎたタスクを赤くしたい」なら、

=AND($A2<TODAY(), $B2<>"完了")

このように、AND関数・OR関数と組み合わせれば、複雑な条件にも対応 できます。


応用③:交互の縞模様(ゼブラ)

1行おきに薄い色を付けて、表を読みやすくしたい」── これも条件付き書式と数式の合わせ技でできます。

数式:

=MOD(ROW(),2)=0

  • ROW() で行番号を取得
  • MOD(割り算の余り)で2で割って余りが0 → 偶数行のみ TRUE
  • 結果、偶数行だけ色塗り

これで ゼブラストライプ が完成します。テーブル化(レッスン070)でも自動で縞模様になりますが、テーブル化したくない場合の代替手段として有効です。

ゼブラストライプ
ゼブラストライプ


応用④:チェックがあれば色を消す

完了チェックが入った行は、グレーアウトして見えなくしたい」というケース。

E列に「完了」と入っているとき、その行をグレーに:

=$E2="完了"

書式で 薄いグレーの背景と、取り消し線 を設定すれば、完了タスクが視覚的に弱まり、未完了タスクが目立つようになります。

タスク管理表でよく使う仕掛けです。「やるべきこと」と「終わったこと」を一目で見分ける ための定番テクニック。


塗りつぶしの色 < 条件付き書式

最後に注意点をひとつ。ここまで条件付き書式について触れてきました。実は条件付き書式と通常のセルの塗りつぶし、条件付き書式のほうが優先されます。

セルに対して、消えない背景色があったら、それは条件付き書式です。こちらは知らないと Excelが壊れた! と思ってしまうポイントですので、このことを覚えておいてください。

ルールのクリアより解決ができます。


LEVEL 10 の前半を終えて

ここまでで、データバー(080)・条件付き書式(081〜083)と進んできました。

  • データバー :セル内に棒グラフ
  • 強調表示ルール・上位下位 :シンプルな条件で塗り分け
  • カラースケール・アイコンセット :マトリクスをヒートマップ化
  • 数式 × 複合参照 :行ごと色塗り、応用無限大

これら 「セルベースの視覚化」 だけで、表の表現力は大きく変わります。複雑なグラフを作らなくても、シートの中で完結する魅せ方 が、これだけ豊かにありますよね。

そして次回からは、もう一段上の 「グラフ」 です。レッスン084 から、棒グラフ・折れ線グラフ・積み上げグラフ・複合グラフ と、本格的なデータ可視化の手段を学んでいきます。


まとめ

  • 数式を使った条件付き書式は「自分で書いた数式が TRUE なら書式適用
  • 行ごと色塗り」は 複合参照($D2 など) がカギ
  • 列を固定する $1つ忘れる だけで、結果がまったく変わる
  • 文字列・日付・MODなど、数式の自由度 が条件付き書式の表現力を解き放つ

ショートカット

  • 条件付き書式の作成中、矢印キーを押す前に [F2] を押しておく
  • セルの参照式で「絶対 → 行固定 → 列固定 → 相対」を切り替え(数式バー内で):[F4]
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